楊海英先生の名著、『墓標なき草原』の中国語版が出版されることになりました。以下は、王力雄先生による序文です。ぜひお読みください。 中国人(漢人)の必読書-『墓標なき草原』中国語版序文 王力雄(劉燕子訳)
議論が中国の民族問題になると、漢人*1 の中でも普遍的価値(自由、民主、人権など)をわきまえている知識人--リベラル派も含む--さえ、少数民族の受難を専制政治の災禍*2 に帰して、漢人が広範囲にわたって民族的な抑圧に関与したことを認めないという、ありきたりの漢民族中心的な観点を有している。その常套的な論法は、漢人も同様に専制政治の被害者であり、各民族の間には対立や憎悪はなく、一心同体で民主主義を実現すれば、全ての問題は自ずから解決するというものである。 しかし、楊海英(モンゴル名、オーノス・チョクト、日本名、大野旭)教授の著書『墓標なき草原-内モンゴルにおける文化大革命の大虐殺の実録-』は、精緻なフィールド・ワーク、考証、多くの体験者の証言により、モンゴル人が受けた被害は、ただ専制政治によるものだけでなく、おびただしい漢人の民衆が政権と一体になり、モンゴル人へのジェノサイドを行使したことを明らかにしている。 …